東日本大震災から14年。震災遺族も山林火災で心が落ち着かない 隣接の陸前高田で

 東日本大震災の14年目を迎える前に、岩手県大船渡市では、山林火災が発生した。住民の多くは、全国から応援でやってくる消防車両や防災ヘリ、自衛隊のヘリを見ることになり、心が落ち着かない日々が続いていた。
渋井哲也 2025.03.09
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 「消防車両のサイレンが1番聞きました。朝はヘリコプターが飛んでいる。だから、あれ(震災)を思い出すねって。聞きたくなって眠れないって人がいました」

応援に入った航空自衛隊のヘリコプター。陸前高田市で待機している(撮影:渋井哲也、25年3月3日)

応援に入った航空自衛隊のヘリコプター。陸前高田市で待機している(撮影:渋井哲也、25年3月3日)

 2月26日に発生した岩手県大船渡市の森林火災は12日目となった3月9日、徐々に避難指示が解除されていった。岩手日報によると、大船渡市は同日、延長の恐れがなくなったとして、鎮圧を宣言した。赤崎地区の2424人は避難指示を継続。10日にはすべての避難指示を解除した。

 東日本大震災から14年目の被災地取材のために、陸前高田市を訪れていた。震災後に知り合った、『陸前高田東日本大震災遺族連絡会』の戸羽初枝さん(63)を訪ねた。

 冒頭の言葉は彼女のものだ。戸羽さんは長男の究さん(当時24歳)と長女の杏さん(当時23歳)を亡くした。2人とも市職員だった。陸前高田民主商工会の事務局長だった弟の利行さん(当時43歳)は行方不明だ。

応援に来ていた横浜市の防災ヘリ(陸前高田市で。撮影:渋井哲也、25年3月3日)

応援に来ていた横浜市の防災ヘリ(陸前高田市で。撮影:渋井哲也、25年3月3日)

 3月2日、戸羽さんの職場「産直はまなす」を訪れた。国道45号線沿いにあり、外にはカカシが立っている。震災後の11年5月22日に開業した場所だ。国道の交通量は多いが、この日は少なめだった。それもそのはず。大船渡市の森林火災があるため、住民たちは大船渡市へ行くのを控えているかのようだった。

山林火災について話をする戸羽初枝さん(「産直はまなす」で。撮影:渋井哲也、25年3月2日、)

山林火災について話をする戸羽初枝さん(「産直はまなす」で。撮影:渋井哲也、25年3月2日、)

 戸羽さんに14年目の3月11日の話を聞くどころではなく、その日は山林火災の消火活動を行っている最中だったために、14年目というよりは、山林火災に関心が向いていた。そのためもあり、戸羽さんへの取材は、ほとんどが山林火災のことだった。

 ロサンゼルス・ドジャースとマイナー契約を結んだ佐々木朗希さんは陸前高田市出身。東日本大震災による大津波で父親と祖父母を亡くした。その後、母親の親戚がいる大船渡市に転居した。こうした縁もあり、大船渡市に見舞金1000万円と寝具500組を寄付した。「今回の山火事で故郷の皆さんが苦しみ、大好きな風景が変わってしまうことに胸が締め付けられています」とコメントした。

 大船渡市の山林火災いは2月19日から始まった。午前11時55分ごろ、大船渡市三陸町綾里田浜下の山林(図の①)で「煙が見える」との119番通報があった。この火災は25日午後3時5分ごろ、鎮圧した。鎮圧というのは、火の勢いが収まり、それ以上の拡大の危険が亡くなったという意味であり、火が消えたことを意味する「鎮火」とは違っている。

 死者もいたという。

 「3回目で一人、亡くなっていたということです」

 産経新聞によると、自民党は3月6日、党本部で災害対策特別委員会を開催し、大船渡市の山林火災の対策について話し合った。その中で、小野寺五典政調会長は「犠牲となった高齢者は(運転)免許を返納されていた。火災が発生し家族や近所の方が駆けつけようとしたが行きつく前に火の回りが早かった」と述べていた。

白地図から、筆者が作成

白地図から、筆者が作成

 25日3時20分ごろ、陸前高田市小友町柳沢の山林(図の②)で「隣から火が出ている。ゴミ焼きの火が燃え移ったようだ」との119番通報がある。この火災は26日正午ごろ、鎮圧した。さらに午後1時ごろ、大船渡市赤崎町合足漁港近くの建物付近(図の③)で「山に燃え放りがりそう」との119番通報があった。

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