【記者会見詳報】「個別指導をしていれば防げた」 東京高専で自殺した男子学生に関する調査報告書を公表 調査委員会が会見
2020年10月、八王子市にある国立東京工業高等専門学校(東京高専)の学生会長だった当時18歳の野村陽向(ひなた)さんが自殺した。コロナ禍の中で文化祭を開くかどうかについて学校側と意見が割れて教員から「暴走」「独断」など強い言葉で非難され、学生会費のポイント利用などについて苛烈な“監査”の対象になっていた。陽向さんの遺書には「私の中で負担になっているのは学生会」と書かれていた。
各社の記事で調査報告書については触れている。また、報告書そのものついていては。東京高専のホームページに詳細が掲載されている。
この記事では、調査委員会(委員長・野村武司東京経済大学教授)の記者会見のやりとりについて掲載する。

黙祷を捧げる調査委員会委員(10月5日、都内。撮影。渋井哲也)
――教員A文化祭の経費をめぐってのことでハラスメントな発言があったということですが、具体的にどのような発言があったのか改めて確認させていただきたい。
調査委・野村委員長(以下、調査委の回答はすべて野村委員長) 報告書でいうと39ページ。当該学生作成の「ハラスメント申入れ書」というものがあり、その中に記載があります。校長にあてられたもの。具体的には、学生会役員の全会一致で決定した文化祭の方針に対する事項について「暴走」などと揶揄し、「資料を作成すると信用が落ちる」など脅しとも取れる内容を、学生会役員へLINEを通じて送信し、当該教員Aから、議決内容を変えろとの圧力を感じましたというのが、具体的な内容になると思います。
――あの、この亡くなられる前日までに三日間ぐらいに及んで、監査と呼ばれる学生からと陽向さんとのやりとりがあったと思うんです。どうしてテスト前に追い詰めるまでやったのかと考えられるかっていうのは、委員としてのお考えをお聞かせいただきたい。
もともと、このポイント利用に関して、教員Aがたまたまある学生からポイントを不正に利用しているようだというような内容を聞いていた。それを校内の教員で共有するんです。その時、そもそもそのいろんな意見が出されたときに出ますけれども、学生会費の執行というのは学生会長に関わり、執行委員会に関わり、そして最終的には監査委員をして、それで学校に出しています。
監査委員が見落としているということから、監査委員にポイントがどのぐらいあるのかを調べてから、ということであったようです。ところが、それを不満に思っていたかどうかはちょっと定かではないんですけれども、教員Aは他のことも調べながら、特に「学生会費でも不正利用があるんじゃないか」という観点からも考えを持っていた。たまたま通りかかった監査委員に対して、そのことも含めて会計監査が必要だというふうに伝えたと思われます。
もともと学校が調査するというのは、ポイントがどのぐらいか、に留まっていたものが、そもそも監査をするっていうお話にすり替わっているんですよね。それを受けたその監査委員の学生は自らの職責の責任感にある意味では燃えた形になったと思うんですけれども、学生会費のポイント利用に関して不正があったことを立証するために追及するという構造に変わっていったというふうに見ています。

報告書を説明する野村武司委員長(10月5日、都内。撮影。渋井哲也)
――この連続したものを見ると、最初のハラスメントからの経緯を見るとこれ同じ教員が関わっているわけですよね。ある意味、当初のその6月の時点でトラブルがあって、教員Aがそれを恨みに思って、こういった形に発展したんじゃないかというように読み取れるんですが。
推測は可能ですけれども、そこまでは認定していません。事実として、6月のこと、それから10月のことということで(連続しているという)推測は可能ですけれども、そこまでは認定できてはいない。